レディースホームFAQM.乳房に関するもの編

1.母乳が出てくるのですが?

 

 当然のことながら、妊娠の経験があるなしで大きく異なってきます。
 まず妊娠の経験がある場合ですが、これは妊娠・出産の経験ばかりではなく、中絶や流産の経験がある場合も含みますので該当する方はこちらもお読みになって下さい。

 ●妊娠の経験がある場合

 一度でも妊娠の経験がある場合、身体は妊娠の終了を合図に母乳を出すように働き始 ます。この機序はまだ完全に解明されているとは言えませんが、プロラクチン、副腎皮質ステロイドホルモン、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)、成長ホルモンなどが母乳の分泌に関与していることがわかっていて、かつ妊娠の終了に伴って急激にエストロゲンとプロゲステロンが減少することが乳汁分泌に至るカギとなっているのではないかと考えられています。
 妊娠していた期間の相違はあっても、一度でも妊娠をすればこれらのホルモンの相互作用による乳汁分泌機構は働き出しますから、流産なり早産なり、あるいは人工妊娠中絶なりの短い期間の妊娠であっても、妊娠の終了とともに母乳分泌機構が働き出して母乳が出るということがあっても不思議はありません。(妊娠初期にはかなり胸が張って痛いという経験をしているものと思いますが、これは乳汁分泌の準備によって発生する症状ともいえます。高温期に胸が張るのも同じ理由からといえるでしょう )
 また、出産後母乳をあげる時期が終わり、再び生理が来るようになったとしても、正常の周期におけるエストロゲンとプロゲステロン、及びプロラクチンとの相互作用により、母乳が時々漏出することも見られます。
 これは、いわば生理的現象が原因となるものですから特に心配することはありませんが、流早産後あるいは中絶後は高プロラクチン血症が起こっている場合が多いため、ブロモクリプチン製剤(パーロデル、パロラクチン)ないしはテルグリド(テルロン)という薬の内服をすることが多いようです。

 なお、「母乳」と思っていても実際はそれが母乳ではない場合もあって、その原因は乳腺の腫瘍であったり感染症(=乳腺炎など)であったりする場合もあります。特に気をつける必要があるのは分泌物に血液が混じっている場合や乳房にしこりを触れることができる場合で、このような場合は迷わず外科を受診すべきであるといえるでしょう。

  ●妊娠の経験がない場合

 妊娠の経験がないのに母乳が出てくる場合には、まず高プロラクチン血症が疑われます。
 高プロラクチン血症については別記してありますのでそちらをご覧下さい。
 高プロラクチン血症以外では、乳腺の腫瘍(特に乳ガン)や乳腺炎、乳腺症などが疑われます。これらの疾患は高プロラクチン血症と違ってしこりを触れる場合が多いためある程度の鑑別は可能ですが、特に乳ガンではしこりがあまりはっきりしないが変な分泌物が出るというケースもまま見られ、中でも血性の分泌物を伴う場合は要注意と言えます。
 いずれにしてもまずは産婦人科ないしは外科を受診して診察を受けるべきでしょう。

 

   ■関連するリンク
    ・高プロラクチン血症とは?
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